あっぱれ、阪神の岩田稔投手
あっぱれ、阪神岩田稔投手、令和元年6月23日
先発の岩田は6回2失点で試合をつくり、今季2勝目を手にした。
「きょうは(チームが)勝ってよかったです。勝つっていいですね。みんなが幸せです。」と彼は話す。
甲子園では695日ぶりとなる勝利の味をしみじみとかみしめた。
実は彼は、高校2年の時に発症した1型糖尿病患者です。血糖測定をしながら、1日4回のインスリン自己注射を行っています。
彼は2005年に阪神に入団し、09年から1勝ごとに10万円を、患者 と家族を支援するNPO法人「日本IDDMネットワーク」に寄付している。
同法人の理事で福井ひまわりの会会長の川崎直人さん(50)=南越前町牧谷=が昨年の8月、岩田投手に「ぜひ北陸の子どもたちに会いに来てほしい」と依頼し、「1型糖尿病」を患う北陸在住の子どもらを招いた初のクリスマス会が昨年、福井県のサンドーム福井で開かれた。参加者は病気との付き合い方や、前向きな生き方などを学んだ。そして、岩田投手の講演会では、岩田投手が病気を発症し、社会人チームの内定を取り消されたことを紹介しました。悔しさをバネに大学で野球を続け、念願のプロ入りを果たしたと話し、「あきらめずに頑張り続ければ夢はかなう。何事も前向きに、病気と向き合おう」と呼び掛けた。
糖尿病には大きく分けて、2つのタイプがあります。1型糖尿病と2型糖尿病です。1型糖尿病は主に(IDDM、インスリン依存型糖尿病、小児期に起こることが多いため小児糖尿病とも呼ばれます)は、主に自己免疫によっておこる病気です。そして多くは小児から青年期に発症します。自分の体のリンパ球が異常行動を起し、インスリン工場である膵臓のランゲルハンス島B細胞を破壊してしまうのです。そうすると、自分ではインスリンを全く作れなくなったり、ほんの微量しかインスリンを出せなくなります。生活習慣病でも、先天性の病気でもありませんし、遺伝して同じ家系の中で何人も発病することもまれです。過去のウイルス感染がリンパ球の内乱のきっかけになっている場合が多いのですが、糖尿病の発病はウイルス感染の影響により起こることは多いですが全ての原因はわかっていません。 インスリンがないと、グルコース(ブドウ糖)を細胞に取り込むことができず、血管のなかにグルコースがあふれかえり、血糖が上昇します。血糖が高い状態が持続すると糖尿病合併症が5年から20年ぐらいで発症します。
対して、2型糖尿病は、遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病します。インスリンの効果が出にくくなったり、分泌のタイミングが悪くなったりします。つまり、多くのひとは食べ過ぎで太っている人が多いです。(なかには痩せている人もいます。)、そして、多くは食事療法や運動療法や内服薬のみで糖尿病コントロールは改善します。
1型糖尿病では、血糖測定をしながら、生涯にわたって毎日数回のインスリン自己注射を続ける必要があります。同じ糖尿病でも1型糖尿病の方が、多くは小児から発症して、数倍大変なのです。でも、岩田選手を始め、多くの1型糖尿病の運動選手も活躍しています。
さらに少し古い話ですが、元巨人のガリクソン投手も1型糖尿病でした。0歳頃になって1型糖尿病を発症しました。毎日インスリン注射をしながら、メジャーリーグのマウンドに立っていました。巨人には、1988年と1989年の2年だけ過ごし、21勝14敗という成績を残してアメリカに戻りました。その後メジャーに戻り、1991年には、D・タイガースで20勝9敗の成績でメジャー最多勝に輝いています。結局14年間のメジャーリーグの選手生活で136勝を挙げています。そして、ガリクソン投手は「ナンバーワンの野球選手になろうと思ったし、ナンバーワンの糖尿病患者にもなろうと思ってきたよ」という言葉を残しています。ナンバーワンの野球選手には及ばなかったかもしれませんが、ナンバーワンの糖尿病患者のひとりであることは間違いありません。ガリクソン投手は年棒以外の副収入は糖尿病患者のために寄付していたそうです。この功績を称え、日本糖尿病協会は社会的貢献をした小児糖尿病患者を表彰する「ガリクソン賞」を制定しています。
ガリクソン投手もすごいですね。世界のスポーツ界でも1型糖尿病でも頑張っている人が多いのです。糖尿病だけで無く、病気があるから、スポーツができないわけではありません。岩田投手は良いお手本ですね。
以上、武蔵小杉徒歩2分の内科クリニック、一般内科、糖尿病内科の院長の布施純郎のお話でした。