いまはやりの脂質やタンパク質などは好きなだけ食べても良いという糖質制限のダイエットについては賛否両論ですが、こってりした料理が大好きの人と甘いスイーツが大好きの人とどちらのほうが太る危険性が高いかでしょうか? 今日はこの問題について考えてみましょう。
こったりした料理とは濃厚なソースをかけた肉料理や揚げ物などで、甘いスイーツが大好きの人とは、メインの肉料理などより、デザートが好きな人を示します。20歳から中年期(40~59歳)までは、こってり味が好きな女性が5kg以上太るリスクは、嫌いな女性の1.28倍。また同様に、甘い味が好きな女性が5kg以上太るリスクは1.22倍でした。若い時期から中年期まではどちらも太りやすいけれど、「こってり味好き」のほうがちょっと肥満リスクが高めであった。ところが中年期以降の10年間を見ると、「こってり味好き」の女性の体重にはほとんど変化がないのに、「甘い味好き」では明らかに体重が増えるようです。こってり味も甘い味も両方好きという人はいずれにしても太りやすいと言えますが、少なくとも中年期に入ったら甘いものを控えたほうが肥満予防に役立ちそうです。
肥満は、糖尿病・高血圧・脂質異常症や心血管病、ある種のがんのリスク要因となっており、厚生労働省は「健康日本21」で生活習慣の変容による肥満者の減少を目標の1つに掲げています。肥満は、食事(摂取エネルギー量)と運動(消費エネルギー量)のアンバランスにより起こりますが、人がどのような食物を選ぶかは、環境、好み、知識などの様々な要因によって決まるといわれています。そして、味の好みは比較的早い時期に形成されるとみられている。そこで研究チームは、20歳から調査開始時までの体重増加、調査開始後の10年間の体重変化を調べ、どのような味の好みをもっている人が肥満になりやすいかを比較検討した。
ところで、この研究は、厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」(主任研究者:津金昌一郎・国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部長)の一環として行われたもの。岩手・秋田・長野・沖縄に住む日本人男女約3万人の参加を得て実施した。調査を開始した1990年の時点での参加者の年齢は40歳から59歳です。
20歳からベースライン調査時までの体重増加、ベースライン調査時からその後の10年間の体重変化を味の好み別に調べました。その結果が専門誌で論文発表されました。(International Journal of Obesity, 2009年33巻1191-1197ページ)
こってり味と甘い味が「嫌い」と答えた人を基準として、「どちらでもない」「好き」と答えた人の、20歳から調査開始時までの5kg以上の体重増加の比率を求めた。その結果、こってり味が「好き」と答えた人は「嫌い」と答えた人に比べ、肥満の比率が男性で1.45倍、女性で1.28倍、高くなることが分かった。また、「どちらでもない」と答えた人でも、男性では1.13倍、女性では1.11倍、比率が高くなっていた。甘い味の好みで比較したところ、女性では「嫌い」と答えた人に比べて、「好き」と答えた人は1.22倍高くなっていた。
さらに、調査開始時からその後10年間の体重変化を調べた。こってり味、甘い味の回答別に、調査開始時からその後の10年間の体重変化量を調べ、「嫌い」と答えた人を基準に、「どちらでもない」「好き」と答えた人と比較した。その結果、こってり味では有意差がみられなかったが、甘い味では、男女とも「好き」「どちらでもない」と答えた人では、体重がより増加する傾向がみられた。
今回の研究では、こってり味、甘い味の好みは男女ともに20歳からベースライン調査時までの体重増加と関係があることが明らかになりました。さらに、甘い味の好みは女性においてはベースライン時からその後の10年間においても体重増加に影響を及ぼすことが示されました。肥満対策は、味の好みも考慮し、20歳以前の早期から行うことの大切さが示唆されたと述べていた。
結論として、中年以降ではやはり、濃厚なソースをかけた肉料理や揚げ物好きのこってり味好みより、甘い味の好みが太る傾向にあることがわかった。スイーツには目がない女子が多いですが、甘いものの食べ過ぎには注意しましょう。太りすぎのおじさん、おばさんにはなりたくないですね。
以上、武蔵小杉徒歩2分の内科クリニック、一般内科、糖尿病内科の院長の布施純郎のお話でした。