京都大学の本庶佑特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞した。その功績は、免疫の「司令塔」であるT細胞の表面に免疫活動のブレーキ役である免疫チェックポイント分子「PD-1」の発見で、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の開発につながった。オプジーボは現在、肺がんなどの複数のがんで画期的な治療法として効果をあげている。
これは、素晴らしいことと思いますが、この「オプジーボ」が功を奏するのは、ごく一部の患者さんの、ごく一部のがんだけであるそうです。
がんは、実は、食生活や生活習慣と深く関係している生活習慣病なんです。タバコや大気汚染、農薬、添加物、肥満などにより体内環境や細胞環境が悪化し、がんを引き起こすのです。
また、日本では戦後、食生活の欧米化が進んだことにより大腸がんや乳がん、前立腺がんが増えた一方で、胃がんが減りました。また、欧米では禁煙が厳しく叫ばれるようになって20年が経過しますが、そうした背景から肺がんが減少しています。その生活習慣やさらに細かく見ると細胞環境を適正なものにしてやれば、がんは退縮していくはずです。
山田豊文先生によれば、退縮する場合の主な機序は次の2つです。一つは、がん幹細胞や、それに準ずる分化度の低いがん細胞が、通常の細胞に戻ることによるものです。もう一つは、分化度の高いがん細胞や、染色体異常や遺伝子変異を伴ったがん細胞が、免疫細胞によって自滅のスイッチが入れられて自滅していくことによるものです。
また、がん細胞は、生存や成長に対して、その他の各種細胞からも特別の優遇を受けています。それこそ全身の細胞によって、がん細胞が成長できる環境が用意される仕組みになっているのです。「それは怖い…」と思われるかも知れませんが、そもそも細胞を怖がらせているのが、がん組織の周辺の悪化した細胞環境だということです。 ですので、悪いのは、細胞環境なのです。
また、オプジーボの効果に関しては、T細胞と言う免疫細胞はがんを自滅(アポトーシス)させる作用があるのですが、それをがんは無力化してしまう力を持っています。そのがんの無力化を停止させるのがオプジーボです。
しかし、がんにして見れば、アポトーシスの働きはほんの一部の大したことの無い働きす。つまり、オプジーボの効果はがん細胞にとって大したことはないのです。それで、この「オプジーボ」が功を奏するのは、ごく一部の患者さんの、ごく一部のがんだけであるそうです。
さらにオプジーボには副作用があります。
厚生労働省はオプジーボを使った後に別の肺がん治療薬で治療したところ、間質性肺疾患などの重い副作用が8例出て、そのうち3人が死亡したとして、注意を喚起しています。
ですので、ノーベル賞は素晴らしいですが、オプジーボは問題のある薬です。また、生活習慣を正して、細胞環境を整えて、免疫力をアップすれば、がんは決して怖くはありません。
最後に2011年に公開された国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめた「がんを防ぐための新12か条」を載せておきます。がんの生活習慣に関しては、たくさん言いたいことはありますが、基本的には、この12条は良いと思います。(10)定期的ながん検診は、ある程度賛成です。
この新12か条は日本人を対象とした疫学調査や、現時点で妥当な研究方法で明らかとされている証拠を元にまとめられたものです。
1.たばこは吸わない
2.他人のたばこの煙をできるだけ避ける
3.お酒はほどほどに
4.バランスのとれた食生活を
5.塩辛い食品は控えめに
6.野菜や果物は不足にならないように
7.適度に運動
8.適切な体重維持
9.ウイルスや細菌の感染予防と治療
10.定期的ながん検診を
11.身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
12.正しいがん情報でがんを知ることから
以上、武蔵小杉北口から、徒歩1分の内科・糖尿病内科・アレルギー科の小杉中央クリニックの院長の布施純郎でした。