現代の咀嚼回数は弥生時代の6分の1
現代の日本の咀嚼回数や食事時間は著しく減少している。NPO法人「健康情報推進機構」の理事長の斎藤滋さんは、こうした状況 を戦後最大の忘れ物と表現している。弥生時代、平安時代、鎌倉時代、江戸時代(初期、後期)、戦前、現代の食事を再現し、20 代の学生たちに食べてもらい、咀嚼回数と食事時間を測定した。
● 食事時間も半減
その結果、現代人の1回の食事の咀嚼回数は弥生時代の6分の1以下、食事時間も5分の1になった。戦前と現代だけを比べても、咀嚼回数が1420 回から620回に、食事時間も22 分から11 分へと、100 年足らずの間に2分の1以下に激減している。口当たりのよい食べ物やファストフード等が増えて、間食にスナック菓子を食べることが多くなっている。卑弥呼の生きた弥生時代の食事は
玄米のおこわや乾燥した木の実、干物など、
硬くて、噛み応えのある食材で構成されていました。それに対して、それに比べ、現代人の好むハンバーグ、スパゲッティなどの食事は、
あまり噛まなくても食べることができるものばかりです。現代人の咀嚼回数は、弥生時代の約6分の1。
食品の加工技術の進歩と共に、咀嚼回数はだんだんと減ってきました。その結果、あごの骨の成長発達が遅れたり、
虫歯や肥満など、噛まないことによって起こる健康問題が懸念されています。
●「さまざまな生活習慣病の原因になる肥満は、よくかむことで予防できます」。満腹感と咀嚼は密接な関係にある。かんでいることが脳に伝わると、脳で神経性ヒスタミンと呼ばれる物質が作られ、この物質が脳の満腹中枢(視床下部腹内側核)を刺激し、人は満腹感を覚えるのだという。さらに、かむと肝臓や筋肉などに貯蔵されている糖分(グリコーゲン)は、ブドウ糖(グルコース)として血液中に放出され、血糖値が上がり、満腹中枢が活性化する。かむことでエネルギー代謝が進み、脂肪の分解を促進することも分かっている。糖尿病患者さんももちろん、たくさん咀嚼すれば、食べる量も減り、血糖値も安定し、糖尿病コントロールは良くなるはずです。また、内科だけでなく、歯科の先生も咀嚼が大事と言っています。噛むことで唾液が多く出ます。その唾液にはたくさんの良い役割があります。唾液中に含まれる成分の中には、消化を助けるもの、悪い菌を退治する抗菌、殺菌作用などがあります。さらに骨や歯の発達を促進するホルモンや、唾液中のPHを中性に保つ役割や歯の再石灰化を促してくれたりと、唾液にはたくさんの働きがあります。これらがお口の中を清潔に保ち、歯周病や虫歯を予防してくれます。 しっかりと咀嚼することがお口の中、全身の健康に繋がると話されています。
また、斎藤さんは、咀嚼回数の目安として、一口30 回を勧める。実践する方法として、食べ物を口に入れたら、まずはしを置き、(1)右側の歯で5回、(2)左側の歯で5回、(3)同じ要領でもう一度、右で5回、左で5回、(4)最後に両方の歯を使って10 回程度かむ――ことを提唱している。口の中で食べ物が、粥状になってから飲み込むことを習慣づけたいと話しています。
最後に日本咀嚼学会は噛むことの効用を、
咀嚼回数の多かった弥生時代の卑弥呼にかけて、「卑弥呼の歯がいーぜ」と表現して、提唱しています。
『ひ』・肥満防止。よく噛んでゆっくり食べることで脳が満腹感を感じ、食べ過ぎを防ぎます。
『み』・味覚の発達
よく噛むことで食べ物本来の美味しさを感じることができ、
味覚が発達します。
『こ』・言葉は噛むことにより顔の筋肉が発達し、
言葉を正しく発音でき、顔の表情も豊かになる。
『の』・脳の発達
噛むことでコメカミがよく動き、
脳への血流が良くなり、脳の活性化に役立ちます。
『は』・歯の病気予防
噛むことで歯の表面が磨かれ、唾液もよく出て、
虫歯や歯周病の予防になる。
『が』・がん予防
唾液の成分である「ペルオキシダーゼ」には
食品中の発がん性を抑える働きがある。
『い』・胃腸の働きを促進
食品を噛み砕いてから飲み込むことで胃腸への負担が軽くなり、
胃腸の働きを正常に保ってくれます。
『ぜ』・全身の体力向上
しっかり噛むことで歯やあごが鍛えられ、全身に力が入るようになります。
以上、武蔵小杉駅から徒歩2分の内科クリニック、一般内科、糖尿病内科の院長の布施純郎のお話でした。