糖尿病予備群とは、どういう病気でしょうか?
健康な人の血糖値は、体温と同じようにほぼ一定しています。食後に少し上がりますが、2時間もすれば元の値に戻ります。糖尿病か糖尿病でないかは血糖値を調べて診断します。具体的には、空腹時血糖値が126mg/dlで糖尿病になります。そして110mg/dl未満で正常です。その間の場合はブドウ糖負荷試験などで精密検査を行ないます。そこでブドウ糖負荷試験の結果が120分値が200以上の場合は糖尿病で140未満が正常です。そして、正常でも糖尿病でも無い人を糖尿病予備軍や境界型糖尿病と呼びます。この程度の血糖値では、糖尿病特有の合併症は起きにくいことがわかっています。そのため、直ちに糖尿病として扱われることはありません。ただし糖尿病予備軍の人は、数年以内に糖尿病を発病する確率が高いことが統計的に明らかになっています。そんな糖尿病予備軍が、厚生労働省発表の「平成19年国民健康・ 栄養調査の概要」によると、日本には約2,210万人もいるそうです。しかも、その前年(平成18年)の調査と比較して、約270万人も 増加しているというのですから驚きです。今、こうしている間にも、予備軍および正規軍の数はぐんぐん増 えているかもしれません。ある調査によると、10年前の糖負荷試験で「正常型」と判定された人のうち、10年 後に糖尿病にすすんでいるのは、4.8%であるのに対し、 「境界型」と判定された人の場合は20~60%が糖尿病へ進ん でいたそうです。予備軍から正規糖尿病軍への移行率はかなり高率ということがわかりま した。
医学的な機序としては、ごはんを食べると、それが吸収されて、ブドウ糖になり、血液中の血糖値が増えます。膵臓のランゲルハンス島にあるベーター細胞からインスリンというホルモンが分泌されます。正常の人の場合はインスリンが速やかに出て、血糖を低下させます。しかし、糖尿病予備軍の場合,インスリンの分泌が立ち遅れるために食後に血糖値が大きく上がります。さらに日本人はこのインスリンの分泌能力が、欧米人の糖尿病患者と比較しても、日本人健常者のインスリン分泌能力の方がはるかに低く、半分以下という驚きのデータもある。日本人は欧米人などと比べとても糖尿病になりやすいのです。そして、糖尿病予備軍はインスリンの分泌の立ち遅れと内臓脂肪の蓄積が合わさると血糖値がより上昇し血管がさらに傷つき、糖尿病予備軍でも、糖尿病性の合併症(網膜症、腎症など)が進展したり、動脈硬化が起こり、心筋梗塞などが正常の人より起こしやすいことがわかってきました。
では、糖尿病予備軍と言われたら、どうすれば、良いのでしょうか。「食事と運動、生活習慣の改善で予防できます。『フィンランド糖尿病予防研究』では、境界型の肥満者に、脂肪摂取量の減少、食物繊維を30g摂取、30分の運動という改善で、4年間での糖尿病発症率が半減しました。日本では、30〜50代の境界型の人たちでの『日本糖尿病予防プログラム』が進行中で、1日20分、週4日以上歩いて700kcalを消費し、適正体重の達成と維持を目標としています。2年経った中間報告では、何も改善しないと約26%が境界型から糖尿病に進みましたが、運動した人たちでは約11%に下がっていました。予備軍をその先の糖尿病に進ませないためには、生活習慣の改善、食事と特に運動が大切です。
また、最近はやりの糖質制限やローカーボと行った方法も糖尿病予備軍の人には有効であると考えます。血糖を上げて体重を増やすのは主には炭水化物です。炭水化物の多い物は、米、パン、麺類、ジャガイモ、サツマイモ、カボチャなどです。夕食などで炭水化物を食べないようにしたり、減らすのも良い方法です。仕事が終わるのが遅くて、夕食が22時以降の人や肥満の人には特にお勧めです。糖尿病や糖尿病予備軍と診断されたら、是非、当院へご来院ください。
以上、武蔵小杉徒歩2分の内科クリニック、一般内科、糖尿病内科の院長の布施純郎のお話でした。