風邪には葛根湯がすごく良いと言われますが、風邪の初期でなければ効きません。ゾクっと寒気が少ししたり、首や背中が凝ったり、頭痛や筋肉の痛みがある場合に良いのです。また風邪でなくても、肩こりなどにも効きます。実際に葛根湯を飲んでみますと、3~40分したら汗を少しかいて寒気が抜けて調子が良くります。しかし、風邪は、大きく分けて二つのタイプがあります。「葛根湯」のように、寒さからくるタイプの風邪(風寒邪=ふうかんじゃ)と、熱感が強いタイプの風邪(風熱邪=ふうねつじゃ)です。悪寒より発熱がひどい。のどが痛い。口が渇き、冷たいものを飲みたがる。この場合は漢方より、熱感が強いタイプの風邪ですと西洋薬の消炎鎮痛剤のロキソニンなどの方が効くと思います。
葛根湯の成分ですが、クズの根(葛根)が主成分となっています。昔から民間療法として風邪を引いた時、クズ湯やショウガ湯などを飲んで体を温めたように、クズの他にショウガの根(生姜)、シナモン(肉桂・桂皮)、ナツメ(大棗)、マオウ (麻黄)、シャクヤク (芍薬)、カンゾウ (甘草)、といった植物が調合されています。クズやショウガの根が全身を温めると同時に、7種類の植物生薬が持つ相互作用によって、血行をよくし、発汗を促すとともに、分泌機能や代謝機能を高め、老廃物を取り除いてくれるといわれています。それだけではなく、西洋薬にはない抗ウイルス作用もあると言われています。この中で重要なのは、葛根です。葛根は性質の穏やかな生薬で、下痢の治療にも使われますが、ここでは熱を冷まし筋肉のこわばりをとる働きをします。麻黄、桂枝は発熱を促進し、体の表面部にある病邪を汗とともに発散させます。同時に芍薬で発熱しすぎになることを防ぎ、生姜、甘草、大棗で消化器の働きを高めます。
この様に7つの生薬があいまって効果を発揮しますが、先ず発汗を促進するために、煎じ薬は熱いうちにのみ、服用後に重ね着し、熱いお粥を食べるといっそう効果があがります。1回の服用で汗が出て病気が退散したならば、続けて服用してはいけません。もし、効果がなければ、そのあと2,3回は服用してもかまいません。
また、風邪というのは人によって症状も違うし体調も違うわけです。風邪になってしばらくしてから、クリニックに来院する人が多いですね。その場合は使用薬は西洋薬などの方が良く効きます。「風邪を引いたかな?ちょっとさむいな。」と思った時に、 すぐに自分にあった風邪の初期のお薬を飲めば、急性期に葛根湯を一服あるいは数服で半日程度で治癒することにしばしば遭遇します。葛根湯は、風邪ウイルスを攻撃し、同時に熱放散中枢を刺激して、セットポイントを平熱近くに下げ、この新しいセットポイントに向けて、全身の熱の放散機構を働かせます。中でも発汗は最も強い熱放散現象です。これらを瞬時にこなすのが、漢方薬の凄さです。この発汗には、強いエネルギーを必要とするので、虚弱者には適当でないでしょう。
さらに、葛根湯は風邪以外の色々な病気に効く事が知られています。例えば風邪の下痢に使うことが有名ですが、風邪でなくても食べ過ぎたりして胃腸の調子を崩して下痢気味のときに何度か葛根湯を飲むと症状がよくなる事もあります。その他に肩こりにも効きます。寝違えたり、ずっと同じ不自然な姿勢をとることで起こるもの急性の痛みに効きます。葛根湯は体を温めて血行をよくする作用があります。それで肩の張りや痛みを取ります。
そして、風邪や肩こりだけで無く、葛根湯はアレルギー性鼻炎、アンギナ、朝のこわばり、インフルエンザ、咽喉炎、おたふくかぜ、肩関節周囲炎、肩こり、眼瞼炎、関節痛、関節リウマチの初期などにも効きます。それ以外の疾患にも効くのです。皆さん機会があったら、葛根湯を是非飲んでみてください。折りを見て、またよく使う漢方の話をして行きたいと思います。
以上、武蔵小杉徒歩2分の内科クリニック、一般内科、糖尿病内科の院長の布施純郎のお話でした。