内科を受診する生活習慣病の中で、高脂血症(脂質異常症)が多くの割合を示します。今日はコレステロールの話です。動脈硬化学会などでは、合併症のある人は、LDL-コレステロールは120mg/dl未満です。特定健診なども同様の数値となっている。これに対して、人間ドッグ学会が反論を開始した。
昨年4月に、人間ドック学会は2011年の人間ドック受診者約150万人のうち、「がんなどにかかっていない」「たばこを吸わない」といった条件で絞った「健康な人」から、無作為に5万人を選んで各検査項目の値をみた。最高と最低からそれぞれ2・5%を除くなどして、各測定値ごとに残った数千~2万人程度の「超健康人」の値を基準にした。健診時の状態が健康かどうかを示しているという。健診基準の緩和案では、65歳以上の女性は上限が190になる。この数値ですと、薬を飲んでいる一部の人は飲まなくても、健康の範囲に入るかもしれないのです。また、この研究の盲点は、現時点で健康であるかということなので、本当なら、この受診者たちを5−10年くらい追ってみて、それでも病気にならなければ、健康であるといえると思います。ドック学会の調査委員会の学術委員長である山門實・三井記念病院特任顧問は「今回の基準範囲のデータから、LDLは、男女差、年齢差があるということが従来よりさらに明確になった。だから、専門学会としてもう一度考えてほしいということ」と話しています。
さらに、1 日に必要なコレステロールのうち、3分の2は肝臓で合成されます。食べ物から摂る量は3分の1。コレステロールを摂っても、肝臓での合成量を調整すること で血中のコレステロール量は一定範囲に収まります。たしかにコレステロールは動脈硬化を引き起こしますが、あくまでバランスの問題であり、悪玉コレステロールを悪者扱いする根拠にはなりません。むしろ最近ではコレステロールの不足が情動に関係する脳内物質セロトニンの不足につながり、うつ病やアルツハイマーの原因なることがわかっているという。
人間ドッグ学会の新しい基準に対して、動脈硬化学会は、脳梗塞や心筋梗塞等の疾患が生じるリスクを追った確たるエビデンスに基づいて基準値を設定していると主張しています。しかし、同学会が定義する境界域高LDLコレステロール血症は120から。ドック受診者150万人の実に48%が120以上だというから、健康人をリスク有りとして拾い過ぎている可能性があります。悪玉コレステロールのきつすぎる基準のみで薬を飲むことは、良くない事です。なぜなら、 コレステロールの薬は、90%近くが、メバロチンやリピトールなどのスタチン系の薬剤が使用されています。このスタチン系の薬剤ですが、くせ者です。数%の人に関節痛や筋肉痛を副作用として起こしてきます。副作用を起こさなくても体に良いとは、限りません。
さらに、コレステロールは、免疫をつかさどる抗体の産生に関与しています。コレステロールが下がりすぎますと、免疫力が低下して、病気に掛かりやすい体になります。つまり、使わないに、越したことは、ありません。
きつすぎる基準は医療機関(内科など)や製薬会社が儲かるばかりで、患者さんには、あまり利益はありません。しかし、全てが無駄な投薬では、ありません、動脈硬化の疑われる人や糖尿病などが合併する人は、積極的にスタチン系の薬剤を使用した方が良い場合もあります。
私は、悪玉コレステロールの高い患者さんは、甘いお菓子(特に洋菓子)は、控えることが大事です。そして、伝統的な和食がよいのです。そういう食事指導や運動指導などを行いダメなら、薬などを飲むべきです。合併症や家族歴がなければ,悪玉コレスレロールは180くらいまでは大丈夫でしょう。小杉中央クリニックはできる限り、薬に頼らない(もしくは緩やかな薬)治療を目指しています。高脂血症の治療をしたい人、なるべく、薬を飲みたく無い人、セカンドオピニオンを聞いて見たい人など、是非、当内科にご来院ください。