忘年会が多い時期です。まずは、一杯ビール好きにはたまらないですね。高尿酸血症、そして痛風は現在、国内の痛風患者は約100万人。24年前から約4倍に増えました。生活習慣の変化で若年化が進んでいるのも最近の特徴で、今や発症年齢のピークは30代です。しかし、20代の痛風患者も珍しくありません。痛風は血液中の尿酸値の高い状態が数年続くと引き起こされる関節炎です。尿酸値の危険水準は、高尿酸血症と診断される7mg/dl以上。この数値を超えると、発症するリスクが増えてきます。
高尿酸血症とは、尿酸は、ヒトにおけるプリン体の最終代謝産物です。生体の細胞内での遺伝情報をつかさどるDNAやRNAなどの核酸や、細胞のエネルギーの貯蔵を担うATPの素になります。このプリン体は食事から摂取されるルートと細胞内で生合成されるルートがありますが、細胞は、過剰に摂取・産生されたプリン体やエネルギー代謝により不要になったプリン体を、キサンチンオキシダーゼという酵素により尿酸に変換し、細胞から血液中に排出します。すなわち、尿酸は細胞の老廃物、エネルギーの燃えカスともいえます。
その血液中の尿酸が多くなりすぎている状態が痛風や高尿酸血症です。尿酸は水分に溶けにくいため、血液中では尿酸塩として存在しています。尿酸が多くなりすぎると、針状の尿酸塩の結晶ができ、足関節などからだの各所にたまって痛みをひき起こします。足の親指のつけねや、手の指、ひじ、ひざが腫れ、ひどく痛みます。痛みははじめの1~3日間がもっともひどくなります。ひどくなると痛くて歩けなくなってしまします。ほとんどは2週間以内にはおさまりますが、治療をせずに放置すると、痛風発作をくり返します。
さらに近年運動不足や食べ過ぎによる肥満などが原因となり、高尿酸血症が痛風の病因という側面のみならず、メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病などの生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)と密接な関連性をもち、生活習慣病や心疾患のマーカーとして、または、動脈硬化を進展させ、心血管疾患のリスクを高める可能性についての報告が増え、注目を集めています。
さて、どういう食事を摂れば良いのでしょうか。高尿酸血症では、尿酸値を下げることが大切です。いずれの治療方法でも、医師による指導と管理が必要です。食事療法は高尿酸血症の治療の基本です。レバー、エビ、あじの干物、子牛の肉、もつ類、ウナギ、カズノコ、ワカサギ、ニシン、カツオ、タラ、マグロなどがプリン体を多く含む食品です。主に肉類が多く、尿を酸性化します。それらをひかえ、バランスのよい食事が必要です。
反対に、尿をアルカリ化して、尿酸を下げる効果があるものは、ヒジキ、ワカメ、コンブ、干シイタケ、大豆、ホウレンソウ、ゴボウ、サツマイモ、ニンジン、バナナ、里芋、キャベツ、メロン、大根、カブ、ナス、ジャガイモ、グレープフルーツとなっています。
お酒はどうでしょうか。
ビールが痛風の原因である血清尿酸値の上昇を引き起こしやすいことは確かです。ビールがアルコール類の中でプリン体を多く含むためと考えられています。
尿酸の元になるプリン体を、缶ビール350mlでは、約20mg含みます。これは、牛肉や豚肉100mgに含まれるプリン体の約1/4~1/5の量です。この話だけを聞くと「たいしたことはないな、ビールが痛風の大敵というのは間違いなのかな」と考えてしまいます。但し、ビールは、一般的に大量に飲まれることが多いアルコールです。数リットル以上のビールを飲む方も珍しくありません。したがって、ビールのプリン体含量が少ないとは言えません。また、ビールの中のプリン体は、食物中のプリン体より吸収率が高い可能性もあります。
ワインやウイスキーや焼酎は、プリン体が少なく、アルコールの中ではお勧めです。忘年会、新年の会では、飲み過ぎないようにして下さい。
以上、武蔵小杉徒歩2分の内科クリニック、一般内科、糖尿病内科の院長の布施純郎のお話でした。