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脂肪肝は食べ過ぎ、酒の多飲や運動不足で、中年以降だけでなく、30代にも増えつつあります。また、侮ることのできない非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と言う肝硬変に移行するタイプの脂肪肝もあります。今日は脂肪肝について、勉強していきましょう。
脂肪肝とは、食べ過ぎや飲みすぎによって、糖分が腸から吸収されると門脈を経て真っ先に肝臓に到達します。同時に、膵臓からインスリンが分泌され、肝臓に到達します。ここでインスリンは糖分の取り込みを行います。この過程で、糖が取り込まれるのですが、過剰に摂取した糖は肝臓に取り込まれると中性脂肪などの脂質へと変換され、蓄積されます。肝臓は肝細胞を再生したり脂肪を処理したりしますが、食事のたびに糖質が肝臓に大量に取り込まれると頑張っても処理しきれません。この大量に蓄積された脂肪が肝細胞に負担をかけて、中性脂肪やコレステロールが溜まった状態が脂肪肝です。つまり、脂肪肝とは、肝臓がフォアグラのような状態になったと考えればわかりやすいかもしれません。健康な肝臓でも3~5%の脂肪を含んでいますが、5%を超えた場合を脂肪肝といいます。脂肪肝になっている組織を顕微鏡で見ると、肝細胞内に球状の脂肪が異常に増えているのがわかります。
脂肪肝になると肝臓の外にコレステロールなどを運ぶ能力が低下して、肝臓内に脂肪が溜まってきて、さらに血液中の脂質も高くなり動脈硬化や狭心症などに繋がります。脂肪肝になる原因は、糖尿病や高脂血症や痛風などの生活習慣病とも合併して、動脈硬化を悪化させます。
それから、脂肪肝には、大きく分けてアルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝疾患があります。アルコール性脂肪肝は文字通りお酒の飲み過ぎが原因で起きる脂肪肝のことで、一方非アルコール性脂肪性肝疾患とは、お酒とは関係ない様々な要因が引き金となる脂肪肝のことです。さらに、非アルコール性脂肪性肝疾患とは、肥満などが原因の生活習慣病である単純性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分類されます。近年ではお酒を飲まない人の脂肪肝が増えている傾向にあり、このNASHが問題視されています。NASHとは、アルコールを原因としない脂肪肝から発生する肝炎です。なぜ問題かと言いますと、進行性の病気だからです。NASHになると、肝臓の炎症や線維化が進んで肝硬変を引き起こすことがあります。進行の速度は早くて、発症後5年~10年で5~20%の確率で肝硬変に変わってしまうと言われています。また、肝臓がんへ移行するケースもあり、重症だと死に至ることもある恐ろしい病気です。全てが、NASHになるわけでは、ありませんが、脂肪肝はあなどれない病気なのです。
脂肪肝を予防し、肝機能を改善するためにも脂肪肝の原因を解消する必要があります。脂肪肝の原因は1.肥満・糖尿病、2.アルコールの飲みすぎなどがあげられます。対策としては、(1)低カロリー・低脂肪食にする。血糖値を上昇させるのは、3大栄養素「糖質・脂質・タンパク質」のうち、糖質だけです。ですから、ごはんやパンなどの炭水化物やお菓子などの甘いものを控えることが大事です。野菜などもたくさん摂ると、腸管からのコレステロールの吸収が抑えられてよいです。アメリカでは、糖質制限(低糖質)ダイエットでも、脂肪肝に効果があると報告されており、糖質制限にて、肥満を解消するのも良い方法と考えます。(2)ジョギングや速歩などの適度な運動も必要です。1日30分以上の速歩を週3日以上はしましょう。(3)脂肪肝を改善する上で、一番大事なことはアルコールを飲みすぎないことです。ダメージを受けても正常細胞が働くので、沈黙の臓器と言われ、症状が出にくいのです。定期的に健診を受け、肝臓の数値をチェックしながら、脂肪肝になる前にきちんとした生活習慣の改善を心がけましょう。
以上、武蔵小杉徒歩2分の内科クリニック、一般内科、糖尿病内科の院長の布施純郎のお話でした。